IoTやAIなど情報テクノロジーの進化がいよいよ実用フェーズに突入し、多くの企業がマンパワーからロボティクス、オートメーション化へと舵を切っています。
そのような状況で、40代~50代の世代を対象とした早期退職制度への募集を行う企業が増えてきています。
社会構造上の問題から、40代以上とりわけ50代の人材が企業内で占める割合は非常に大きくなっているのが現状です。
人件費などの観点からも40~50代人材を放出し若手人材を登用することで、社内構造を変革し新たな事業構造を確立させたいというのが、多くの日系企業のトレンドになっています。
そんな流れを背景として、早期退職制度に応募すべきか否かを悩む40~50代の方も多い方に向け、早期退職制度の現状と応募に関するメリット・デメリットをそれぞれお伝えします。
【2018年11月14日公開】
目次
早期退職者の推移と現状
「早期退職制度」いわゆる「リストラ」については、2008年のリーマンショックの影響を受けた2009年度をピークに、この10年近くは減少の傾向にありました。
しかし昨年の2017年については、希望・早期退職制度への募集を行った上場企業は27社と前年の18社から急増し、5年ぶりに増加へと転じています(※東京商工リサーチ調べ)。
このリストラ増加の背景にあるものは大きく2つ挙げられ、1つは縮小する国内需要への対策として、海外への進出を強める企業が増えているということ。
2つ目はIoTなど新しいテクノロジーを活用した新規ビジネスへのシフトなどを志向する企業が増えていることです。
新たなビジネスに適応可能な30代~40代人材を積極的に採用し、従来ビジネスの担い手であった多くの50代以上の人材を放出しようとしていることです。
早期退職のメリット①:退職金の増額
早期退職制度を活用することで得られる1番のメリットは「経済的インセンティブ」になります。
具体的な内容については各企業により大きく異なりますが、最も多いケースとしては退職時に受け取ることができる「退職一時金」の増額です。
退職一時金は規定で設定された金額よりも、多くの退職金を手にすることができるという即時的なメリットがあります。
また、そのほかでは「企業年金による収入保障」が受けられる企業などもあり、50代以上の人材が早期退職プログラムに応募した場合にはその後60歳まで企業年金として一定の金額が支給されます。
このように、通常の定年退職や自己都合退職との比較で、より多くの経済的なインセンティブを受けられることがメリットの1つです。
早期退職のメリット②:キャリアアップに繋がる
早期退職制度への応募をきっかけにして、キャリアアップを成功させる人も少なくありません。
所属企業や業務内容、年収などに不満がなければ、無理な転職などを考える必要がなくなるのが50代という年代です。
そのため、本来のキャリアや実績・スキルなどから考えれば、より高いポジションやよりハイキャリアな職を目指すことができる人材が、課長やマネージャーレベルに留まっているケースなどがあります。
このような人が早期退職制度の募集をきっかけとして、転職活動をスタートさせ現状よりも上の職位で別の企業に移ることや、スタートアップ企業などに執行役員以上の経験幹部として迎え入れられるケースは珍しくありません。
自分自身で気が付いていないキャリアアップのきっかけを、早期退職制度への応募によって得られるということも、この制度を活用する際の隠れたメリットになります。
早期退職のメリット③:60歳以降のキャリアパスへの好影響
50代での早期退職制度応募に限定したメリットと言えますが、50代以降の転職は、年を重ねるごとに難易度が増します。
60才で定年退職を迎え、第2の人生をスタートさせるべく転職しようとしてもそのハードルは想像以上で、正社員として一般職に就くことは非常に難しく、多くの人がパートタイマーなどに転身せざるを得ないのが60才以降の転職です。
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そのため、50代で「60才以降の雇用が保障されている企業」へと転職しておくことで、60才以降のキャリアパスを少しでも有利に転職活動を進められる50代に形成しておくことが重要となります。
その1つの「支援制度」として、早期退職制度を利用するという人も少なくありません。
どうせ無理に残ったとしてもやりたい仕事もなく、これまでのポジションについても確保できない不遇な10年を過ごすのであれば、60代でも活躍ができそうな企業に移りたいという50代の人は年々増えてきています。
早期退職のデメリット①:転職というリスクテイクが必要
早期退職制度における最大のデメリットは、安定した就業環境を捨て「転職」というリスクテイクが避けられないことです。
早期退職制度が実行されるということは、事業不振や経営環境の悪化など企業状態は決して良好とはいえない状況であることは事実としても、ある一定の安定した就業環境は保障されています。
一方で、早期退職制度に応募をして転職をする場合、将来性の高い企業で、よりよい就業環境を得られる可能性がある反面、職務内容や職場の雰囲気などは、実際に働かなければ分からないのが一般的です。
場合によっては全く自分には合わない職場となってしまうリスクもあるでしょう。
このように安定した就業環境を捨て、全く分からない新しい環境に飛び込むというリスクテイクが必須となる点は大きなデメリットと言えます。
早期退職のデメリット②:キャリアダウンのリスク
早期退職制度の活用に関するメリットと背中合わせにあるデメリットが「キャリアダウンのリスク」です。
転職をすることによってキャリアアップを成功させられる人がいる一方で、残念ながらキャリアダウンとなってしまうケースも少なくありません。
一般的に転職する場合には、前職のポジションよりも1ランク下のポジションで入社することとなります。
例えば、部長職のポジションにいた人であれば、次長もしくは課長での入社となり、入社後の実績などを鑑みて、一定期間経過後に部長職へ昇格するという形をとることが通常です。
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しかし転職後に期待値通りの活躍ができない場合や、想定されていた人物像と実務の適応性が少なく別の部門に転籍になってしまう場合には、昇格どころか最悪、降格させられる場合も少なくありません。
1度職位を落としてすぐに戻せばいいと安易に考えてしまうと、新たなキャリアへのチャレンジがキャリアダウンのデメリットを生み出してしまうことも理解しましょう。
早期退職のデメリット③:転職ができないリスク
早期退職制度に応募する際に、最も避けなければならないケースが「転職ができない」ということです。
次の転職先の目途が立たない状況でとりあえず早期退職に応募してしまって、あとから後悔するという人も案外多いのが現実です。
関連:50代で会社辞めたい・限界と感じた時にまず考えるべきこと
早期退職に応募をして、その後1年以上再就職先が決まっていないという50代以上の人は、 実は少なくありません。
大手企業で部長職にいたようなハイキャリアの人材でも、語学力や専門スキルなど汎用性が高いビジネススキルを身に着けていなければ、転職活動は非常に厳しいということを認識することが重要です。
転職活動に苦戦をする人に多いパターンですが、
「営業職のみの経験、資格なし」
「英語がNG」
「営業経験がない、企画・マーケティング人材」
このようなスペックに該当する場合には、どんなに不満が残る条件であったとしても、早期退職にはエントリーせず、会社に残ることを優先しましょう。
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早期退職者のその後の生活
では次に、早期退職後のその後の生活を把握するべく、実際に早期退職を行った方々の体験談を取材しましたので全貌をお伝えします。
●早期退職者のその後の生活
私が早期退職をした件につきましては、会社の経営悪化が主な原因の1つです(製造業)。
早期退職したその後は、製造業からはかけはなれた某金融機関でも役員の方々の運転手をしています。
生活につきましては1日があっという間に終わり、1日が充実しております。
思い切って辞めてその後の生活は金銭的にも以前と変わりはありません。
●早期退職者のその後の生活
早期退職後は退職金と失業保険もすぐ支給され、職業訓練にパソコンの資格を取得しようと通いながら就職活動を続けていました。
結婚はしていたので主人と相談して出た結果は子供もいないし、生活に困ることもないから正社員にこだわらなくてもいいんじゃないかとなりました。
フル勤務パートで探すと案外条件がいいようで、募集項目も増えたので以前働いていた検品の仕事をしようか考えていました。
しかしせっかくなので違う職種に挑戦しようと思い、事務の仕事をしようと面接するも、経験者ではなかったのでなかなか採用されずダメなのかと思いました。
しかし家の近くにある保険事務所の営業事務の募集があったので面接を受けてみることになり、結果採用して頂きました。
始めのうちは慣れないことで失敗も多かったですが、個人経営でアットホームな職場で優しく指導してもらってます。
●早期退職者のその後の生活
少ないですが貯蓄と退職金とで生活していますが家族と住んでいますので、生活費はそんなに必要ではないから、やっていけてます。
病院の先生が言うには早起きが良いらしく規則正しい生活をしてみてくださいと勧められたので、毎日早起きをし1時間くらいのんびりと散歩をしています。
健康面も良くなってきたので、今ではそろそろ仕事も探してまた働こうと考えています。
今度、面接に行く予定です。無理をせず一歩一歩進めていけたら良いなと思っています。
早期退職後の傾向としては、
・別の会社に正社員として転職する
・パートとして転職する
・一旦働かない
という3つのパターンのいずれかの生活を送ることになり、結果としてはなんとかやっていけているという人が多いのが現状のようです。
早期退職者後に正社員転職する場合
先ほどの早期退職経験者の体験談でもお伝えした通り、早期退職後に別の会社の正社員として転職することは非常にハードルが高いものです。
転職したいと思っても年齢が原因で募集企業から足切りされてしまったり、スキルを持っていないことが原因で選考に通過できなくなることも珍しくありません。
そのためもし早期退職後に正社員として働ける求人を探したいのであれば「転職エージェント」を利用して転職活動を行うことは必須と言えるでしょう。
転職エージェントを使えば、利用者は無料で自分の条件を受け入れてくれる企業を紹介してもらうことができます。
また、そもそも早期退職すべきなのか否かという部分について相談することも可能です。
「50代ベテランに強い転職エージェント」でおすすめの転職エージェントを紹介していますので、ぜひ早期退職後転職を検討されているのであれば利用されてみて下さいね。