大学職員として働いている人がこんな風に考えてしまうのは、大学という職場が他の企業とは少し違う職場環境や、独自のルールなどがあるからです。
実は私も6年ほど大学職員として働いていましたが、大学職員ならではの職場の悩みや仕事の大変さを感じました。
そのため職員の待遇や福利厚生は大企業並みにもかかわらず、心を病んでしまう人や若い人でも退職する人が毎年少なくはありませんでした。
そして私自身も大学職員から別の仕事に転職し、新たな人生を歩んでいる一人です。
今までの経験を活かした良い転職先があるなら転職したい!と思っている人に向けて、まずは大学職員の仕事を振り返り、転職のメリット・デメリットなどを見ていきたいと思います。
さらに具体的におすすめの大学職員からの転職先や転職必勝法のコツなども説明したいと思います。
これから大学職員への転職に興味がある方については「大学職員転職は厳しい?→否!大学事務の志望動機【中途採用】」を併せてお読み頂けたら幸いです。
Miho Tanaka
新卒で大学職員として教務課や学生課に勤務。
述べ2,000人以上の学生指導に携わる。
担当は教務課や学生課を中心に幅広い業界に従事し、職種は営業、企画、事務職などを幅広く経験。
10代後半〜20代前半の学生支援を強みとしている。
【2024年11月20日新規公開】
目次
大学職員から転職したい/辞めたい理由
大学職員を辞めたい理由は人それぞれだと思いますが、私が個人的に感じていたことも含めて、大学職員が陥りやすい悩みを挙げてみました。
それぞれ詳しく見ていきます。
残業が多く隠れブラックな環境に悩んでいる
大学はホワイト企業というイメージがあります。確かに大学の場合、残業代の未払いなどはないため休日出勤や時間外手当はきちんと支払われます。
その反面、「しっかり給料をもらっているのだから仕事が終わるまで残業をしなければいけない」そんな昔ながらの暗黙のルールが漂っている大学も多いです。真面目で責任感の強い人が多いため、周りが残業しているのに自分だけ帰れないと職場全体で頑張り過ぎてしまう傾向もあります。
例えば私が大学で最初に配属された部署は、文科省に提出する書類を作成する部署だったため、大変な時は2ヶ月間毎日12時まで残業していたこともありました。私の部署は特殊でしたが、誰一人文句を言わずに長時間残業をしていた環境は、企業でいえば「ブラック企業」と呼ばれても良いレベルでした。
働いている人の能力に差がある
大学の中にはすごく優秀な人材もいるのに、ウソでしょ?と思うほど仕事ができない人がいます。
その原因は大学の職員採用制度に「入りづらく、出づらい」特徴があるからです。採用される年によっては、競争率が高く優秀な人達しか入れない年もあれば、景気の良い時は就職先の見つからない学生を、大学の就職率をあげるため大学で雇用するなど、良い人材が入らない年もあります。
そして大学に対して大きな損失を与えるなど、刑事事件などを起こさない限り、簡単には解雇されないという点も企業とは少し違います。そのため働いている職員の能力に差が生じ、難しい仕事や重要な仕事は、必然的に仕事ができる人に任されその重圧がストレスになることがあります。
能力を正当に評価されない
能力に差があっても大学は年功序列が基本なので、いくら人事考課制度があっても勤続年数の長い人は、仕事ができなくても給料は高額です。
そんな環境の中で若くて能力があり仕事ができる人は、能力が低い人や仕事に対して不真面目な人の何倍も仕事をしなければなりません。仕事ができない人に対して大学組織は、できる仕事しか与えないので毎日定時に帰ります。
その分、仕事ができる人は残業が増え、かなり理不尽な環境で働き続けなければいけません。
部署異動が多く適性に合わないと辛い
大学職員の仕事といっても入試広報、人事、総務、就職課、学生課など大学によって呼称は違いますが、さまざまな部署がありどの部署に配属されるかは選べません。また各部署は1~3年置きに人事異動があり、退職するまで部署間のローテーションは続きます。
一つの部署に長く配属されることはないため、自分の適性にあった部署の時はやりがいを感じても、苦手な部署では仕事が苦痛になることもあります。
土日に出勤することも多い
特にオープンキャンパスや入試関連業務が土日に集中することが多く、休日出勤が発生する職場も少なくありません。
代休制度がある場合もありますが、休みが連続しないことや家庭との時間を調整するのが難しいと感じる人もいます。
土日に家族や友人と過ごす時間を大切にしたい人にとって、このような勤務体制は負担になる可能性があります。
転勤がなく人間関係で悩むと苦労が多い
大学職員の大きな特徴の一つに、転勤が少ない点があります。
一見安定しているように見えますが、同じ職場で長く働くことで人間関係の悩みが深刻化するケースもあります。
限られた人間関係の中で問題が発生すると、解決が難しく精神的な負担を感じることもあるでしょう。
転勤が少ないことから、一度トラブルなど居心地の悪さを感じてしまった場合、転職を考えざるを得ない状況になるリスクがあります。
大手学校法人だと大学以外への異動もある
大手学校法人に属する場合、必ずしも大学だけで勤務するとは限りません。
付属高校や専門学校、あるいは法人本部への異動が発生することもあります。
異動先によって業務内容が大きく変わるため、新しい環境に適応する負担が生じることがあります。
一方で、多様な経験を積む機会と捉えることも可能です。しかし、異動先が自分のキャリアや希望に沿わない場合、やりがいを見失うリスクもあります。
大学職員から転職したら後悔?辞めてよかった?
実際に大学職員から転職してよかったこと、後悔したことについてまとめてみました。
大学職員から転職してよかったこと
■能力や成果を評価してもらえる
一般企業に転職すると自分の能力を正当に評価してもらえる機会があります。評価の基準は商品の売上やお客様からの評価、上司からの評価などさまざまですが、その評価が昇進に繋がるなど自分の能力や仕事の成果を評価してもらえるチャンスが大学職員の頃より増えます。
企業の場合、同期でも仕事の成果によって早く昇進する人もいれば、しない人もいるので勤続年数が昇進や給与に大きく影響する大学職員より仕事にやりがいを感じられます。
■閉塞感のある環境から逃れられる
大学は所属によって仕事内容が異なるため、部署内の問題は基本的に数名〜十数名の所属メンバーで解決しなければなりません。たまたま良いメンバーや上司が集まれば最高の職場環境になりますが、その反対に一人でも問題のあるメンバーがいれば職場環境は悪化します。
私の働いていた大学もそうでしたが、閉塞感のある職場は問題の解決にも時間がかかります。職場内の悩みを誰にも相談できずに、周りが気づいた時にはすっかり心を病んでしまっていたというケースも大学職員時代に見ました。
そのため大学ならではの閉塞感のある環境がどうしても苦手という人には、大学以外の職場に転職することで人事異動の恐怖や、部署内での孤独感から逃れることができます。
■適性を活かせる
定期的な部署のローテーションは企業にはあまりないため、大学以外の職場に転職することで仕事の専門性を高められ、自分の適性や経験に応じた部署に異動することも可能になります。また環境の変化が苦手な人には、毎年職場環境が変わる大学職員とは違い、職場環境が安定した職種を選ぶことで、ストレスなく適性にあった仕事に打ち込むことができます。
好きな仕事がはっきりしていて、もっとその仕事に専念したいと思えるものがあれば、オールラウンダーが求められる大学職員よりもやりがいを感じながら働くことができます。
大学職員から転職して後悔したこと&デメリット
■給料や各種手当が下がる
文部科学省が令和3年に公開した「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の役職員の給与等の水準(令和2年度)の取りまとめ」によると大学職員(国立)の給与は下記の通りでした。
- 平均年収:約588万円
- 平均賞与:約157万円
- 平均初任給:約18万3千円
※国立大学法人85校すべての給与支給状況、給与モデルから平均年収、平均賞与、平均初任給を算出
※参考:独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(令和2年度)
初任給こそそれほど高くはありませんが、住宅手当やボーナスその他手当が手厚く存在するため、転職して収入が減ってしまうデメリットがあります。
■まとまった休暇が短くなる
夏季休暇やGW、年末年始など授業などがない期間に長期休暇を設定している大学が多く、他の企業との関係がある一般企業よりもまとまった休みが取りやすいメリットがあります。
そのため長期の休暇が趣味や家族との時間に必要な人は、年間休日が少ない会社に転職してしまうと、今よりも休みや自分の時間が少なくなるデメリットがあります。
■職場のサービス施設のレベルが下がる
大学の中でも特に私立大学などは施設がかなり充実していることが多く、国立大学でも学内にコンビニや銀行ATM、食堂が併設しているためサービス施設が充実しています。充実したサービス施設が職場にあることに慣れていると、転職先の周辺環境によっては不便に感じてしまうかもしれません。
大学職員からの転職で評価されるスキルや経験は?
大学職員からの転職で評価されるスキルや経験について、解説します。
企画力
大学職員は、イベントの企画や講座の設計、広報活動のプランニングなど、さまざまな場面で企画力を発揮しています。
特に、限られたリソースの中で効果的なプランを立案し、周囲を巻き込む力は、企業でも評価されるものです。
企画力はマーケティングやプロモーション職だけでなく、事業企画や商品開発など多岐にわたる分野で活かせるスキルです。
大学で培った柔軟な発想力や、多様なニーズを捉える力が、転職後のキャリアを広げる鍵になるでしょう。
運営力・プロジェクト推進力
大学運営では、入試業務や学内イベント、オープンキャンパスなど大規模なプロジェクトを管理する機会が豊富にあります。
これにより、業務を計画的に進めるスキルや、関係者間の調整力が自然と磨かれます。
プロジェクトを期限内に遂行し、成果を出す能力は、多くの企業が求める人材要件と一致します。
特に、複数のタスクを同時に管理し、チームを牽引する力は、業種を問わず転職市場で高評価を得られるスキルと言えるでしょう。
真面目に業務に取り組む姿勢
大学職員は採用難易度も高く、特に中途採用の場合は学歴や社会人経歴も優秀な方が厳選される傾向にあります。
業務においても教育機関としての使命感や、学生・教職員への対応の丁寧さが求められる環境で働いています。
この経験から培われた真摯な姿勢や、誠実な仕事への取り組み方は、企業にとって信頼感を生む要素です。
細かいタスクをミスなくこなす能力や、相手に安心感を与える対応力は、どの職種においても重宝されます。
真面目さをもとにポテンシャルが評価されることで、未経験の職種でも採用される可能性が高まります。
大学職員から転職先おすすめ3選!キャリアパス
それではここからは、大学職員から転職先おすすめ3選として具体的な大学職員からのキャリアパスについて紹介して参ります。
広報・マーケティング部門 | |
会計事務所・税理士事務所 | |
事務職(人事・総務・経理) |
※⭐️の数は転職先おすすめ度
それでは順番に一つずつ転職先について詳しく見ていきましょう。
大学職員から転職先おすすめ①広報・マーケティング部門
大学の入試・広報の部署を経験した人であれば、企業の広報やマーケティングなどの転職先がおすすめです。
大学の入試・広報で培ったオープンキャンパスなどの企画や実施のノウハウは、企業のさまざまなイベント活動にも役立ちます。また受験生に対するPRのための冊子物、ホームページ、SNSなどの各媒体の運営や管理方法など、どの企業でも宣伝PRのために用いられるツールのため、企業にとっての即戦力として採用される可能性が高いです。
企業の広報活動は自社サービスやイベント情報などの発信、メディアや社内外への発信を行います。マーケティング部門では市場調査や販売戦略の立案など、大学事務の仕事に多いデータ集計のスキルを活かすことができます。そして企業では大学の入学試験のような業務はないので、企業の宣伝活動や市場調査に専念して専門性を磨くことも可能です。
大学職員から転職先おすすめ②会計事務所・税理士事務所
大学での経理や法務関係の仕事が好きで、新しい環境でやりがいのある仕事がしたいと思っている人には、会計事務所や税理士事務所がおすすめです。
大学事務での事務処理経験などもアピールできますし、専門知識は在職中に勉強して簿記2級や公認会計士、税理士などの資格があると有利です。履歴書に資格を記載できれば、スムーズな転職につながります。ただし資格はできる限り大学職員時代に取得することが重要になりますので、転職までの準備はしっかり行ってください。
転職後は会計事務所では税制改正など、日常的に変化に対応するために勉強しなくてはならないことが沢山あるため、新しいことを学んでいく意欲が求められます。
また、クライアントである企業の経理担当者や経営者とのやり取りにおいて「コミュニケーションスキル」は必須になります。大学においてさまざまな部署で、立場を変えて対応するコミュニケーション能力は、会計事務所など未経験から働く場合にも十分活かされるでしょう。
資格取得の道のりなど決して簡単ではありませんが、仕事にやりがいを求めている人には、自分の能力をさらに磨くことができる仕事です。
何より大学職員時代に得られなかったお客様からの「ありがとう」の言葉など、頑張った分だけ感謝してもらえる仕事なので、勉強熱心でこの先も成長しつづけたい人におすすめの転職先です。
大学職員から転職先おすすめ③事務職(人事・総務・経理)
大学職員は文書作成から個人情報の扱い方、学生アンケートなどの集計業務に至るまで、事務作業がとても多いのが特徴です。経験が長いほど基本的なパソコン業務はもちろん、あらゆる事務処理が身につき、事務仕事のエキスパートにもなります。
そのためせっかく事務職の経験が豊富なら、それを活かした同じ事務職での転職が、実は一番ハードルが低くおすすめです。履歴書でも大学名は企業名よりも認知度が高いため、採用担当者に興味を持ってもらいやすく有利です。
人事・総務・経理など、どの企業でも事務職は存在するため、たくさんの求人から職場環境や自分のライフスタイルに合う会社を選ぶことも可能です。企業の採用側も事務経験があり、コミュニケーション能力も高いとわかれば即戦力として働ける人材が欲しいため、即採用につながるケースが多いです。
転職後に一から仕事を覚えて人間関係も一から構築するのは大変です。事務職への転職は、これまでの経験を無駄にすることなく、自分の力を発揮できるため新しい環境でも心配が少ないというメリットがあります。
ただデメリットとしては、これまでの収入や福利厚生などと比べると転職後の収入が下がる傾向がありますので、その点を踏まえても転職したいと思えるかが重要です。これまでの経験を活かして収入は少し減っても、閉塞的な人間関係に縛られることなく事務として働きたい人には、他の企業での事務職のお仕事をおすすめします。
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大学職員からの転職必勝のコツ3選
- データを扱うスキルやパソコン能力は幅広い職種の転職に有利
- 教育、研究活動、社会貢献など多方面の人とのコミュニケーション能力を活かす
- 資格や興味のある分野の勉強をはじめ、転職に有利な条件を準備しておく
- 就職先が決定した(=サポートの必要がなくなった)
データを扱うスキルやパソコン能力は幅広い職種の転職に有利
大学職員の現在の仕事はどの部署でもパソコンを使わない仕事はなく、学生アンケートや文科省への統計データの提出、成績入力や学生情報のデータベースなど、パソコンやデータを扱えるスキルが必要です。
大学事務として当たり前に行っていたパソコン業務も一般企業ではあまり使わない場合もあるため、データ処理や高度なパソコン業務なども今のうちにしっかり身につけておくことで、転職時に幅広い職種で歓迎されるスキルになります。
教育、研究活動、社会貢献など多方面の人とのコミュニケーション能力を活かす
大学では、学生や教員はもちろん、地域社会での活動、広報としてメディア対応、企業のリクルーターとの対応など、さまざまな関係性の人と仕事を通じて関わることが多いです。相手によって自分の立場も変わるため、状況に応じて高いコミュニケーション能力が必要です。
そのことにより培ったコミュニケーション能力は転職先でも活きてきます。自分はどんな人達と関わる仕事が楽しかったか、やりがいを感じたかを思い出し、今後の仕事の選択の手がかりにしていきましょう。
資格や興味のある分野の勉強をはじめ、転職に有利な条件を準備しておく
「今すぐにではなくてもいずれ転職したい」そう思っている方におすすめなのは、大学職員でいるうちに資格や興味のある分野の勉強をはじめておくことです。
大学職員でお仕事をこなしてきた人は他の職場へも転職は可能ですが、長期休暇などまとまった休日がある今のうちに、スキルをあげるための勉強や、他の分野の資格を取ることをおすすめします。転職前に大変でも努力して身につけたことは、採用基準で高く評価され未経験の職種でも希望の仕事に採用される確率をあげてくれます。
大学職員からの転職先をもっと知る方法
今回は大学職員からの転職先について3つ代表して紹介しましたが、もっと詳しく知る方法としては、転職サイト・転職エージェントを活用することで自分で求人を探したり担当キャリアアドバイザーに紹介してもらうことも可能です。
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