病院管理栄養士といえば、食や医療の知識を身につけて働くことができ栄養士の仕事では「花形」と言われていますよね。
病院栄養士の求人はとても人気ですが、仕事は「大変」「きつい」とも言われることもあるため、実際どうなのか気になっている方は多いのではないでしょうか。
私は元々、委託会社の栄養士として働いていましたが、病院栄養士の転職に成功し8年間働いています。
委託会社での栄養士業務は、資格を活かした仕事ができず「このままでいいのだろうか」と悩みを抱えていましたが、今では病院栄養士になれて良かったと感じています。
今回は病院栄養士になろうかと迷っている方に向けて、病院栄養士の仕事内容ややりがい、給料事情を詳しく解説していきます。
Yuko Nakamura
委託の給食会社の管理栄養士として勤務。
老人保健施設(950食程)と病院(45食程)で現場責任者として携わる。
現在は病院栄養士へと転職が成功し8年間ストレスフリーな毎日を送っている。
【2024年8月2日最終更新】
目次
病院管理栄養士は大変?辞めたい理由
病院栄養士と聞くと「大変」「きつい」と言われることがありますが、どういうところが大変なのか?辞めたいと思うのか?具体的に説明していきます。
①職場の人間関係がストレス
病院に勤務する管理栄養士の場合、院内の他職種の方と協力して仕事を進めていくため、人間関係にストレスを抱える場合があります。
患者様の食事を決める際は、病気の状態を把握する必要があるため、医師、看護師、言語聴覚士など異なる職種の方々から意見を聞いた上で決めていきます。
他の職種の方から意見を聞く場合、キツイ言葉をかけられることも場合によってはあるかもしれません。
特に急性期の病院や総合病院では、命に関わる状態の方もいるため、病棟は忙しくピリピリしていることがあります。
ただ、病院栄養士として仕事をこなしていくと、様々な職種と仕事をしていくことにより対応力が身につくでしょう。
②管理栄養士が職場に一人で仕事量が多い
働く職場によっては、一人体制により管理栄養士が一人で「入院患者の栄養管理」「栄養指導」「食材発注」「献立作成」「調理業務」を任されるケースがあります。
多くの仕事を一人でこなさなければならず負担に感じる場合もあるでしょう。
仕事量があまりに多いと、月に何十時間も残業しなければならないということあるかもしれません。
また、調理場が人手不足になると栄養士が現場の仕事を補わなければならず、栄養士業務の時間が取れないといった負担も発生してきます。
しかし、多岐に渡る仕事をこなせるようになると、栄養士としての経験値が高くなり、転職する際も有利になるでしょう。
③大量調理が大変
給食の委託会社が入っていない病院では、調理作業も行わなければなりません。
病院食は一般的な家庭料理とは違い、食数が多く大量調理になります。
それに加え、患者様の病態に合わせた多くの食種が存在します。
そのため、正確で素早い対応が必要になるため、調理が得意ではない場合は大変だと感じることが多いかもしれません。
しかし、大量調理の経験があると、栄養士としての実務経験を積むことができます。
④専門知識の勉強が大変
病院で働く場合、患者様の状態を把握するため、病気に関する知識や輸液の種類、検査値の見方、嚥下の状態など多くの専門的スキルが必要になります。
病院の種類にもよりますが、その病院に合わせた知識の勉強が必要になります。
例えば、透析を専門にしている泌尿器科の病院であれば、その病態に合わせた食事を提供しなければならないため、日々勉強することが必須です。
そのため、介護施設や保育施設などと比べると、専門的な知識を身につける必要があり、勉強が負担になる人もいるでしょう。
ただ、医療の知識が身につくと臨床開発関連の企業や製薬会社へ転職できるメリットがあり、働き方の選択肢が広がるといった利点があります。
⑤栄養指導が大変
栄養士は、患者様やそのご家族に栄養指導をすることがありますが、説明の仕方や相手に合わせた指導に配慮しなければなりません。
栄養指導する相手の病気の状態やライフスタイルをしっかり伺った上で、その人に合わせた指導をしないと全く意味がないものになってしまう可能があるからです。
改善に導いていくためには、何が必要かを会話の中から探し、提案しなければならず慣れないうちは大変だと感じることもあるでしょう。
また、患者様によっては栄養指導されること自体に拒否反応を持っている方もいます。
改善に向けて行動してもらうよう話し方のスキルを要するため、コミュニケーション能力を高めていくことが求められます。
⑥メニュー献立作りが大変
病院栄養士は毎日3食、365日給食を提供しなければいけないので常に献立を作成する業務のことを考えていなくてはいけません。
前日、翌日と食材が被らないこと、同じような料理が続かないことなど様々なことを考えながら献立を作成するので献立作成業務は簡単に終わるものでもありません。
しかも学校栄養士や事業所の栄養士の場合は献立が一種類なので調理も単純なのですが、病院管理栄養士の場合、給食は病気の治療のためのものなので病気に合わせた献立がたくさんあります。
患者さんによってはアレルギーや禁止の食材もあるので個人対応をしなくてはいけない場合も多く、頭を使いますし責任感やプレッシャーもありますね。
栄養価が合っていても患者さんに食べてもらえなかったら意味がないので、患者さんや病棟の看護師とのコミュニケーションも重要ですし、現場の調理師が配膳時間に間に合うような作業量の献立にしなくてはいけません。
病院管理栄養士の大変さを乗り越えるために
大変なことも多い病院管理栄養士ですが、基本的には乗り越えていくために意識したいポイントを解説します。
業務を効率的に実施する
業務をできるだけ効率的に遂行できるように意識しましょう。
病院管理栄養士の大変さは業務の煩雑性による多忙さが要因になっていることが多いので、まずはタスク分解を意識しましょう。
例えば、栄養指導や食事管理、患者の栄養状態の評価など、ある程度ルーティンで実施できる内容と、患者や状況ごとなど個別に検討が必要な内容は分けられるはずです。
日々の業務を整理し、業務効率を高めることができれば、日常業務における余裕も生まれてきます。
捻出した余裕によって、突発的な業務にも落ち着いて対応したり、専門知識の習得などキャリアアップに時間を使ったり、プライベートを充実することもできるでしょう。
専門性を高め職務内容を変える
病院管理栄養士としての専門性を高めることで、任される職務内容をより専門的なものにしてきましょう。
人間関係による大変さを感じている場合は、転職するか、異動するかしか選択肢がないことが多いです。
そのため、転職によるキャリアアップや、転職せずとも落ち着いて働くことができる業務に異動する機会を掴むためにも、日々自己研鑽に励み専門性を高めましょう。
例えば、特定の疾患に特化した栄養管理のエキスパートとしての役割を追求することや、研究活動や教育機関での講師として活躍する道などが挙げられるでしょう。
病院管理栄養士の離職率は?勝ち組?
では、病院管理栄養士の離職率は高いのでしょうか。
実際には栄養士の離職率を表す明確なデータは存在していません。栄養士が就職する業種でみていきましょう。
主に栄養士は「飲食サービス業」、「学習支援業」、「医療・福祉」に分けられ、離職率は以下の数値になっています。
- 飲食サービス業27%
- 学習支援業16%
- 医療・福祉14%
病院栄養士は医療・福祉に分けられるため、離職率は14%ということになります。
厚生労働省が令和3年に発表した「令和2年雇用動向調査結果の概況」では、日本の平均離職率は14.2%でした。
飲食サービス業は27%と高い数値ですが、医療・福祉に該当する病院管理栄養士の離職率は平均的ということが分かります。
働く職場環境にもよりますが、長く働き続けられる仕事という意味では、病院管理栄養士の仕事は離職率がそこまで高くないことから勝ち組と言えるでしょう。
病院管理栄養士向いていない人の特徴
- コミュニケーションを取ることが苦手な人
- 責任感がない人
- 食や健康に関心を持てない人
- 調理がそもそも苦手な人
病院管理栄養士は患者さんの健康管理をお手伝いする仕事ですから、自分の健康管理すらできない人に務まることはありません。
特に学校や保育園などよりも病院管理栄養士はよりシビアな健康への意識が求められますので、相応の責任感やプレッシャーを感じる業種でもあります。
また、食材や栄養素についての知識や新しいトレンドに対する興味がなければ、栄養士としてのスキルアップは難しく時間も遅いことが予想されます。
そもそも調理するのが苦手で食事のトレンドや栄養に関する新しい情報を常に学び続けることもできない場合は、病院管理栄養士としての仕事は向いてないと言えるでしょう。
病院管理栄養士の仕事内容
では、続いて病院管理栄養士の仕事内容についてご紹介していきます。
病院管理栄養士の仕事内容は大きく分けて
「臨床栄養業務」
「給食管理業務」
の2つがに分けられますので、それぞれ解説していきます。
臨床栄養業務
- 入院患者の臨床栄養管理
- 栄養管理計画書と入院診療計画書の作成、確認
- 入院・外来栄養指導
- 集団教室
- 入院患者の食事内容確認
- NST(Nutrition Support Team, 栄養サポートチーム)
- 回診・カンファレンス参加
臨床栄養業務は簡単に説明すると、患者様の病状をよく把握し、その病状に合わせた食事を提供することです。
臨床栄養業務は病棟に出向き、患者様の病状を医師や看護師から確認し、カルテを確認した上で調査していきます。
医師の治療方針を確認しながら栄養状態を評価し、その方に合った食事を提供します。
栄養指導は、患者様の栄養状態をみながら食事のアドバイスを行う業務です。
また、病院によって※NSTを行っているところでは、栄養士が中心になり患者様のデータをまとめていきます。
専門職間のやりとりなどの調整役も行うため、他職種との関りが増えていき、高いコミュニケーション能力が身につくでしょう。
NSTを行っている病院ですと、医師や看護師などから食の専門家として頼りにされる存在となりやりがいを感じることも多くあります。
※NST(Nutrition Support Team, 栄養サポートチーム)とは患者様に、最良のな栄養管理を提供するために、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、放射線技師、言語聴覚士(ST)理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、医療事務、管理栄養士などの他職種で種構成された医療チームのこと。
給食管理業務
- 調理作業
- 献立作成
- 発注、検収、検品、棚卸し
- 食数管理、食札管理
給食管理業務とは、簡単に説明すると考えた献立を調理し、食事を提供することです。
献立は多くの病院が※サイクルメニューを導入しているため、クリスマスやお正月などといった行事食を少し変えるという調整のみで負担は多くありません。
患者様の病態や嚥下状態に合わせた食事を提供していくため、食事の種類が多くなることがあります。
中核病院などの場合、多くの病態の方がいるため、食事の種類も多くなるのが特徴です。
給食管理業務は栄養士にとって基本的なスキルになるため、給食管理の経験があると転職を考えた場合、介護施設や保育施設など多くの職場で働け、仕事の幅が広がります。
また、満足度の高い食事を提供できた場合、患者様から感謝されることも多く、やりがいを感じることもできるでしょう。
※サイクルメニューとはあらかじめ一定期間のメニューを決めておき、そのメニューを季節に分けるなどして繰り返し提供する形式のこと。
病院管理栄養士のやりがい
担当業務によって異なる部分はありますが、病院で管理栄養士として働く魅力ややりがいを解説します。
栄養指導で患者さまの回復をサポート
病院管理栄養士としてのやりがいの一つは、栄養指導などを通じて患者の健康回復を直接的にサポートできることです。
患者一人ひとりの病状に合わせた食事療法を提案し、具体的な食事計画を立てることで、生活の質の向上を目指します。
患者が食事改善に取り組み、その結果として体調が良くなったと感じたとき、直接的に貢献できた喜びを感じることでしょう。
このように、患者の健康に寄与する実感が、大きなやりがいと言えます。
チーム医療に関わる専門性の高さ
医療チームの一員として高い専門性を発揮し、患者の治療に役立てることも、病院で働く管理栄養士の大きなやりがいとなります。
病院管理栄養士は、医師や看護師などの他職種と連携して患者のケアにあたるチーム医療の一員です。
栄養に関する専門知識を活かし、患者の治療計画に貢献することが求められます。
例えば、糖尿病や腎臓病などの慢性疾患患者に対する食事療法では、その専門性が特に重要になるため、専門知識を発揮できるポイントになるでしょう。
スペシャリストとしてキャリアアップ
病院管理栄養士は、専門知識と経験を活かしてキャリアアップを目指すことができます。
例えば、特定の疾患に特化した栄養管理のスペシャリストとしての道や、管理職として栄養管理部門を統括するポジションがあります。
また、研究活動や教育機関での講師としてのキャリアも考えられます。
自分の専門性をさらに高めることで、多様なキャリアパスを追求することができるのも魅力と言えるでしょう。
病院管理栄養士の年収や給料事情
リクナビNEXTのデータによると、管理栄養士の資格を保持している人の平均年収は288.1万円と言われています。
勤務先にもよりますが、特に保育園などの栄養士は、給料が低い傾向にあります。
関連:保育園管理栄養士しんどい人へ!栄養士からの転職先おすすめ4選
しかし、病院栄養士の場合、栄養士全体の平均年収より高くなる傾向があります。
正社員の病院管理栄養士の場合、平均年収は約300万円台です。
ただし、この年収は病院の規模であったり、地域差により多少違いがあるので一概にはいえません。
また、資格を取得したり、経験年数が長くなると役職がつき給料が上がることも十分ありえます。
「糖尿病療養指導士」「NST専門療法士」などの資格を取得すると、大幅に給料が上がることがあるでしょう。
病院管理栄養士の休日や福利厚生
病院管理栄養士として働く上での環境面について解説します。
休日日数
病院管理栄養士の休日日数は、勤務先によって異なりますが、多くの病院では年間105日~120日の間で就業規定として定められているケースが多いです。
これには、週休二日制や祝日、年末年始休暇が含まれます。
勤務日・休日だけでなく、朝・昼・夜といった時間帯も含めたシフト勤務が一般的です。
あくまで就業先の環境によりますが、連続休暇の取得も可能なため、ある程度仕事とプライベートの両立がしやすい環境が整えられています。
福利厚生
病院管理栄養士の福利厚生は充実しており、安定して就業することができる制度は整っているケースが多いでしょう。
基本的な健康保険や厚生年金のほか、育児休暇制度、マイカー通勤制度などが整っています。
また、研修制度や資格取得支援もあり、専門職としてのスキルアップを支援する体制が整っています。
病院栄養士の転職志望動機例文3選
では、病院栄養士として働く場合、どのような志望動機を作成すればいいのでしょうか。
実際に病院栄養士として採用された志望動機の例文をポイントとともにご紹介いたします。
委託会社の栄養士の志望動機例文
これまで委託会社で3年間勤務してきまして、1日平均100食の食事を提供して参りました。
主な業務内容は、調理業務、献立作成、献立展開、衛生管理です。患者様の治療食を担当することはとてもやりがいを感じておりますが、医療の知識を身につけながらもっと患者様に寄り添い治療に貢献できる仕事がしたいと思い病院栄養士を志望しています。
貴院は栄養サポートチームのNSTを導入し、より良い看護ができるよう個別に応じた栄養管理を行っていると伺いました。最良の栄養療法を提供している貴院で医療の知識を身につけ、患者様の治療のサポートをしていきたいと切望しております。
ポイント➡患者様の治療に貢献したいと伝える
病院栄養士の仕事は、患者様の病気の治療に合わせた食事を提供することです。
患者様が抱える病気が改善していくよう食を通じて貢献していきたいという思いが感じられるような伝え方をしていきましょう。
介護施設の栄養士の志望動機例文
ポイント➡高い向上心がありスキルアップしていきたい気持ちを伝える
病院栄養士として働く場合、医療の進歩に合わせて学び続けることが必須となっていきます。
高い向上心がありスキルアップできる人材を必要としているため、成長する意欲があることをアピールしましょう。
食品会社の栄養士の志望動機例文
ポイント➡コミュニケーション能力の高さをアピールしよう
病院は様々な専門職と仕事を行い、患者様に接していきます。
人と関わることが多いため、コミュニケーション能力が必要になってきます。
人との柔軟な対応能力があることをしっかりと伝えましょう。
病院栄養士は高いスキルを身につけられる
病院栄養士は他の栄養士の職種と比べると、専門知識の勉強が多く、関わる人も多い傾向にあり大変さを感じることはあるかもしれません。
しかしその反面、栄養士として学んだ知識や技術を十分に活かすことができ、食の専門家として働くことが可能です。
医師や看護師などの専門職との関りもあり相談される機会も多く、仕事の楽しさを感じられるでしょう。
また、患者様の側で病気のサポートをしていくことができ、とても貢献度の高い仕事といえます。
患者様から「食事美味しかったよ」「ありがとう」などと感謝の言葉をかけられることも多く、やりがいのある仕事です。
もし、病院管理栄養士になりたいと考えている方はdodaの転職エージェントをぜひ活用にしてみてください。
>>doda公式HP詳細はコチラ<<
✅全国の求人数270,000件以上(業界No.1)
✅業界専任キャリアアドバイザーの親身なサポート
求人数270,000件以上(※業界最大級) 顧客転職満足度No.1の親身な対応! 北海道~九州全国に面談拠点あり! |
初めての転職でも手厚いサポート! 求人を厳選して紹介してもらえる! 業界出身のキャリアアドバイザーが書類添削! |
※マイナビのプロモーションを含みます