塾講師の仕事の業務は幅広くとても大変な業界ですが、教育にやりがいを感じて働いている方が多い業界でもあります。
しかし、激務・薄給・人員不足などの理由から、理想と現実のギャップに悩まされて転職を考える人も少なくありません。
そこで今回は、塾講師から転職するのに向いている業界・職種について、元キャリアアドバイザーとして塾講師の転職をサポートしてきた実体験を元に紹介します。
塾講師として働く中で身に付いたスキルを活かせる業界・職種についても詳しくご紹介していきますので、転職を検討されている方はぜひ参考にしてください。
【最終編集日:2021年10月1日】
目次
塾講師・教室長を辞めたい理由
塾講師を辞めたいと考える理由として、以下5つに該当する可能性が高いです。
勤務時間が長すぎる
塾講師を辞めたいと考える人の中で最も多い理由は「勤務時間が長すぎる(長時間労働)」です。
塾講師は土曜日は基本的に出勤で週休1日であることが多く、加えて入試が近づくと日曜日も当たり前のように出社が求められます。
授業の後に事務作業や残務処理などに追われた結果、毎日深夜帰宅もザラになってしまい、勤務時間が長すぎる理由で退職を考える人は後を絶ちません。
給料が安すぎる
塾講師を辞めたいと考える人の中で二番目に多い理由は「給料が安すぎる」という理由です。
前述した長時間労働とも関係していますが、「こんなに働いているのにこれだけしか給料が貰えない」「大学生のアルバイト時代とそんなに給料が変わらない」という状況が蔓延しています。
受験生のためにという熱い気持ちは持っているものの、お盆や年末年始なども返上しているにも関わらず、自分の生活が潤っていかないのは、やはり仕事を長く続けるという選択肢を限りなく低くしているでしょう。
持ち帰り残業がきつい
塾講師特有の事情として、テストの採点や宿題のチェックなど家に仕事を持ち帰って行わなければならないことも離職の理由の一つです。
ただでさえ長時間労働で働いているにも関わらず、せっかくの休日もテストの採点や課題チェックに追われることに嫌気がさし辞めたいと感じてしまうのは必然でしょう。
ノルマが厳しい
塾講師、あるいは教室長という立場になると、生徒の成績アップだけでなく新規生徒の獲得や新しいコマの設定など追うべきノルマが負担になってしまうことも少なくありません。
営業や販売職などではなく「純粋に生徒が好き」「教えることが好き」という理由で塾講師の仕事についた人にとっては、顔の見えない数字を追うことは予想以上のプレッシャーとなり得ます。
生徒の親からのプレッシャー
塾講師を辞めたい理由の一つに「生徒の親によるプレッシャー」が原因で退職してしまう人も少なくありません。
塾に通う生徒の親は当然、決して安くはないお金を払って子供を通わせている訳ですから、当然成績が上がらなかったり志望校に合格できなかったりした時のプレッシャーはかかります。
生徒の点数をあげることに全力を注いだにも関わらず、その努力が実を結ばずに結果に表れなかった時はやはり辞めてしまいたいと思うのは当然でしょう。
塾講師が転職先を見つけるのが難しい理由
スキルが評価されにくい
塾講師の仕事は残業が多くノルマとプレッシャーの厳しいキツイものですが、転職市場においては評価されにくいスキルです。
一般企業の社員がやり取りする相手は、自分より立場の上である顧客であることがほとんどですが、顧客といえ立場が下で学生である生徒とのやり取りは実績として認められにくいのです。
自己PRや職務経歴書でのアピール方法を工夫したり、できるだけ年齢が若い20代のうちから転職活動を始めておくなどの対策が必要でしょう。
転職時期が制限される
塾講師が一年間の中で最も重要な時期は当然受験シーズンですが、実は受験シーズンというのは転職市場においても繁忙期で非常に転職しやすい時期でもあります。
4月入社を見据えて年明けの1月~3月にかけて求人がドバッと増えて転職希望者の動きも活発になるのですが、塾講師の場合なかなか身動きが取れない時期ですよね。
とは言っても1月~3月の時期以外は転職できないかというと決してそんなことはなく、1年を通して転職する人は一定数いるので諦めずに転職活動を行いましょう。
塾講師として働くことで身につくスキル
塾講師を辞めて別の仕事に転職したいという人は、どのようなスキル・経験を活かして転職先を見つけていけば良いのでしょうか。
塾講師の仕事を通して、一般企業で評価されるスキルも確実に身につきますので、どのようなスキルなのか詳しく解説していきます。
塾講師の主な仕事は「授業をすること」ですが、完全に同じ仕事は学校教師でもない限り他の業界では少ないため、転職時のアピール材料としては弱くなります。
そこで転職活動においてアピールしたいのが、
生徒に物事を分かりやすく教えるためにどのような工夫をしていたか
どのように授業を改善していたか
後輩・部下へどのように指導していたか
上記3つです。
これらを言語化すると、
「生徒に物事を分かりやすく教えるためにどのような工夫をしていたか」
→『プレゼンテーションスキル』
「どのように授業を改善していたか」
→『業務改善スキル』
「後輩・部下へどのように指導していたか」
→『マネジメントスキル』
といったスキルが身に付いていることが見えてくるでしょう。
抽象的な表現ではなく具体的なエピソードを交えて身に付けたスキルを伝えることで異業界/異職種でも貢献できる人材であることをアピールすることができます。
塾講師が転職先を見つけて転職成功するコツ
転職理由を明確にしておく
塾講師が転職先を見つけるためには「なぜ転職したいか」「どんな仕事をしたいか」を明確にしましょう。転職理由が明確化すると志望動機もハッキリします。
そうすると、面接で志望動機を話すときに熱量高く伝えることもできるようになります。塾講師の転職にはやる気とポテンシャルの高さが欠かせません。
転職後に「こんなはずではなかった」というミスマッチも起きにくくなります。
20代のうちに転職する
塾講師は上記で挙げたスキルにくわえ「ポテンシャルの高さ」も評価対象です。ポテンシャルは若いほうが高いです。
他業種への転職は27,8歳くらいが限界という説もあります。他業種への転職を考えている方は、20代のうちに転職するようにしましょう。
教育者よりビジネスマンの視点をもつ
転職市場では塾講師の教育者としての視点より、利益を追求するビジネスマンの視点でアピールしましょう。
塾講師の仕事を通じて利益を生み出した経験などを職務経歴書や面接でアピールすることをおすすめします。
たとえば、個別指導授業を導入して顧客単価を上げた経験や、授業料を安くして顧客数を増やした経験などを盛り込みます。
できるだけ昨年や導入前の数字を持ってきて「前年比○%アップ」などと数字で具体的に伝えましょう。
面接対策を入念に行う
塾講師は学生とやり取りすることがほとんどですので「つぶしがきかない」と思われていることがあります。
面接を通じて、法人の顧客ともやり取りできるビジネススキルをアピールしましょう。身のこなしや話し方も一般企業向けにトレーニングしておくこともおすすめします。
塾講師からの転職先おすすめ7選まとめ
では具体的に、塾講師からの転職先のおすすめを7つに分けて解説して参ります。
※⭐️5(難しい)〜1(優しい)の5段階で転職難易度を評価
WEB広告の営業 | |
人材紹介会社のコンサルタント | |
医療機器メーカー営業職 | |
生命保険の営業職 | |
一般企業の事務職 | |
飲食業・小売業のマネージャー | |
教育関連の企画・商品開発職 |
塾講師で培った『プレゼンスキル』『業務改善スキル』『マネジメントスキル』を存分に活かせる仕事なので、ぜひ転職先の一つの参考として頂ければと思います。
塾講師から転職先①:WEB広告業界の営業職
特に20代の塾講師の方におすすめしたい転職先がWEB広告業界の営業職です。
近年WEB広告業界は2022年現在も急成長を遂げており、業界の成長に伴って未経験者を歓迎する求人数が増えている、今最も注目したい業界と言えます。

(「矢野経済研究所」より引用)
無形商材の営業職というのは単純な物売りではなく、顧客一人ひとりのニーズに合った商品を企画提案していく仕事ですので、塾講師で身に付けた『プレゼンテーションスキル』を存分に活かすことが可能です。
また、業界全体として今後の発展にも大いに期待できる業界ですので、20代のうちにWEB業界の専門性を身に付けることで、その後の転職も有利に進めキャリアアップできる可能性も充分に期待できるでしょう。
代表的な大手企業としては、DMM.com・リクルートグループ各社・サイバーエージェント・オプト・セプテーニHD・GMOグループなどが挙げられます。
塾講師から転職先②:人材紹介会社のコンサルタント
人材紹介会社(転職エージェント)のコンサルタントは「人材を採用したい企業」と「転職先を見つけたい求職者」を結び付ける社会的意義が非常に高い仕事です。
人材紹介会社の仕事は、求職者や企業の採用担当者と接する中で相手のニーズを聞き出して両者をマッチングすることが求められる仕事です。

生徒一人ひとりと真正面から向き合う必要があるため、学習塾の仕事との親和性が高いと言えますので、塾講師としての経験を活かしてフィットする働き方ができるおすすめの転職先です。
事実、教育業界→人材業界の転職の流れは年々非常に加速しているので、いざ転職した後に「元々教育業界にいた」という人の遭遇する可能性も高いでしょう。
代表的な大手企業は、株式会社リクルート・パーソルキャリア株式会社・株式会社パソナ・株式会社マイナビなどが挙げられますね。
塾講師から転職先③:医療機器メーカー営業職
塾講師からの転職先として、医療機器メーカーの営業職もお勧めの一つです。
塾講師を辞めたいと考える人の理由の多くに「給料」を挙げているのは前述した通りですが、営業職の中でも医療機器業界はインセンティブ色が強い傾向にあります
「医療とか全く経験も知識もないけど大丈夫なの…?」と思われるかもしれませんが、未経験でも研修がしっかり整えられている会社は少なくないので、充分活躍することが可能です。
実際に塾講師から医療機器メーカーの営業職に転職を成功させた男性の体験談をご紹介しましょう。
塾講師から転職体験談
27歳男性:医療機器メーカー営業職に転職
医療機器メーカーを選んだのは、未経験可で研修がしっかりしていたことと、仕事と休みのメリハリがしっかりしていて給料も満足いくものだったからです
他の業界に転職することは初めてだったので不安はありましたが、その不安を払拭できる環境が揃っている医療機器の会社を転職先として選びました。
最初は塾講師から営業への転職で何をPRすれば良いか自分では全くわかりませんでしたが、経験豊富なdodaに相談したところ一発で解決できました。
ヒアリングをしっかりしてくれ、自分の長所と短所を教えてくれましたし、面接でどのように答えたや良いか、その対策や模擬面接もしてくれたので緊張せずに本番に臨むことができました。
塾講師から転職先④:生命保険の営業職
塾講師からの転職先として、生命保険会社の営業マンという選択肢もあります。
塾講師時代に生徒の親と話をすることを得意としていた元塾講師の方で、「授業を販売する」という感覚をそのまま保険商品にスライドさせることで営業マンとして結果を出し続けることが可能です。
実際に塾講師から生命保険の営業マンへの転職を成功させた女性の体験談をご紹介します。
塾講師から転職体験談
24歳女性:生命保険の営業職に転職
母親が同じ生命保険業界で働いていて営業マンとしてバリバリ成功しているのを見て、自分もこうなりたいと思っていたのが転職した一番大きな理由です。
ただし会社選びについては、コネを使って入るのは嫌だったので、そこそこ待遇が良く、通勤が楽な保険会社を選びました。
営業についてはやる前から多少自分に向いているのでは、という自負があり、塾講師をしている際も親御さんとの面談で営業に近い事をしていたので抵抗はありませんでした。
転職活動の際はdodaエージェントを利用したのですが、ハローワークに比べて細かい待遇をすぐに知ることができたので良かったです。
働きやすさよりも給料面で良い会社を選びたかったのでとても使ってよかったなと思っていますし、応募した後の日程もトントン拍子で進んだため、特に滞りなく次の職場に入ることができました。
塾講師から転職先⑤:一般企業の事務職
ワークライフバランスを改善したい方へは、事務職への転職をおすすめします。
一言で「事務職」と言っても、一般事務や秘書・人事・総務・経理などさまざまな職種がありますが、基本的なPCスキルや社会人経験があれば未経験でも応募できる求人がありますので、自分のスキルを活かせそうな求人を探してみましょう。
ただ、事務職は2022年現在有効求人倍率(※転職者一人当たりの求人数)が最も低く転職市場では非常に人気の高い職種のため、簡単に転職できる職種ではありません。

塾講師として働いていたということは勉強そのものが嫌いではないと思いますので、実際に企業へ応募するまでの期間に転職先でアピールできそうな資格を取得しておくと、未経験でも即戦力性をアピールすることができます。
たとえば、
経理職を希望する場合は「簿記」
一般事務や秘書を希望する場合は「秘書検定」
事務職全般で活かせる資格としては「MOS資格」
などの資格がおすすめです。
事務職に強い資格を取得しておくと、競争の高い事務職の転職市場において未経験でも転職活動を有利に進めることができるでしょう。
塾講師から転職先⑥:飲食業・小売業のマネージャー
30代以上で教室長などのマネジメント経験をお持ちの方は、飲食業・小売業のエリアマネージャーが転職しやすくおすすめです。
飲食業や小売業と聞くと「ハードワーク」をイメージされる方も多いと思いますが、現在は労働環境が改善されつつありますので、会社選びさえ間違えなければ、収入面でも条件の良い働き方をすることができます。
また、エリアマネージャーとは、本社と店舗のパイプ役となる重要な役割で、担当エリアのマーケティング・在庫管理・接客教育・商品構成など、幅広い仕事に携わります。
教室長として身に付けた『教育スキル』『運営スキル』『マーケティングスキル』等を総合的に活かして早期から貢献できる仕事です。
代表的な大手企業としては、ゼンショーHD・コロワイド・イオン株式会社などが挙げられますね。
塾講師から転職先⑦:教育関連の企画・商品開発職
いきなり教育業界から全くの別業界へ転職することが現実的でないのであれば、教育関連の企画・商品開発職への転職も選択肢の一つです。
現場を経験したからこそわかる、今求められている教材や生徒が反応するトレンドなどを察知できるので、未経験者よりも活躍できる可能性が高いと判断されることが多いです。
ワークライフバランスという観点でも、塾講師のように生徒の時間に合わせて…という必要がなくなるため、かなりホワイトな労働環境で働けることでしょう。
教育そのものが好きという人にとっては、切っても切れない転職先ですね。
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