「経理って転職しやすい?」と思ったことはありませんか?
実は正しく実務を経験すれば、キャリアが面白いように積み上がるのが経理職です。
私はこれまで人材紹介の事業責任者として、一流企業から中小ベンチャー企業に至るまで数百件以上の経理職の求人案件の依頼を受けてきました。
同時に、大手転職支援サービスでキャリアコンサルタントとして、100人を超える経理職の転職支援を成功させてきました。
なぜ、それほどまでに転職サポートが可能だったのかというと、ひとえに経理職が転職しやすい職種だからです。
もちろん転職せずに、経理のスペシャリストとして経験を積み、将来的には「CFO(最高財務責任者)」をキャリアの終着地として目指す選択肢もあります。
もしも、いま学生の私が目の前にいるなら、迷わず経理職を選ぶようにアドバイスするほど、キャリアを構築するにはもってこいの職種なのです。
その理由を今回は具体的に解説していきたいと思います。
最終編集日.2020年10月10日
目次
経理経験者は他職種へ転職しやすい理由
経理経験者は、他の事務などの職種に比べると転職しやすい立場にある職種です。
その理由は以下の通りです。
数値管理能力を評価されやすい
多くの企業では、社員に対して簿記検定の取得を薦めたり、社員教育として財務会計の研修を実施しています。
その点、経理経験者は現場レベルでの実務経験があるため、経理の実務経験者は数値管理能力などを武器に、他の職種への転職も可能です。
20代や30代前半までなら、将来の幹部候補として経理職の人材を採用する考えの企業があります。
ドンブリ勘定だった営業体制を見直すために、経理経験者であっても営業職に採用を考えているベンチャー企業もあります。
経営企画部の求人募集で経理畑出身を歓迎しているのは、決算等でお金の流れを実務で経験した、数値管理能力に期待をしているからです。
資格取得に励むと、人物面を評価されやすい
経理職には、関連する資格が数多くあります。
公認会計士や税理士といった上位の国家資格でなくても、簿記検定や英文会計など自分自身で目標を設定し取り組んでいることで、真面目で向上心が高いと人物面を評価される傾向にあります。
会社の資金を取り扱う職種上、誠実さや勤勉さが備わっているかどうかも、経理職の採用において企業が見ているポイントにもなります。
たとえ未経験であっても、社内での人間関係を良好に構築できる点で人物面を高く評価され、採用されるケースも珍しくありません。
どの企業でも必要とされているため、一定の求人ニーズがある
全ての会社は決算書の作成が法律で義務付けられているため、経理はなくてはならない重要な存在です。
「経理はつぶしがきく」と言われるのは、経理はどの企業でも存在している点や、国内で同じ法律やルールに基づいて業務を行っているからです。
欠員になれば、すぐに募集して人員を確保しなければなりません。
最近増えているM&Aや海外子会社との管理会計などにおいても、経理人材には一定の求人ニーズがありますね。
実務経験と求人がマッチすれば、転職がしやすい
経理の場合、職務経歴書に書かれてある実務経験によって内定がほぼ決まることが少なくありません。
そのため、希望するスキルを保有している応募者かどうかが企業側の最大の関心事と言ってもいいでしょう。
ヒアリングに企業を訪問しても「連結決算書の作成経験者はいますか?」「有価証券報告書作成者はいますか?」などと真っ先に質問が飛びます。
言い換えるなら、スキルがマッチングさえすれば、転職が可能と言えるのです。
経理の転職に強い転職エージェントランキング【数字のプロ】
経理から転職しやすい職種例一覧
経理から他職種へ転職しやすい理由は前述した通りですが、実際に転職しやすい職種の実例についていくつかご紹介して参ります。
経理職▶︎営業職への転職
経理職として経験を積むと、必然的に数字に強くなり組織の経営状況を数字という面で把握できるようになります。
そのため、顧客をお金の面でサポートする金融機関の法人営業職や店舗の経営サポートを行うコンサル営業職などに転職することもできるでしょう。
経理職▶︎事務職への転職
経理はバックオフィス系職種の中でも専門性の高い職種のため、経理以外のバックオフィス系職種への転職は比較的容易と言えます。
特に事務職に関しては、もちろん会社によってどのレベルの範囲を任されるかも異なりますが、基本的には通用する(転職できる)と考えて間違いありません。
経理職▶︎経理職(同職種)
もちろん、別職種ではなく同じ経理としての経験を活かし別の条件の良い会社へ転職するという選択肢もあります。
経理職は他の職種と比較して求人数が多く、人手が枯渇している企業の数が多くなっているため、同職種に関してもかなり引く手あまたの状況となっています。

一般的に、40代〜50代の中高年と呼ばれる世代の求人は少なく「転職しにくい」と敬遠されがちですが、経理経験者であれば転職市場はまるっきり変わってきます。
中高年であっても、経理経験という専門知識を身につけておくこととマネジメント経験があれば、経理部長のような経営幹部に近しいポジションで受け入れてくれる会社は増えます。
ただし経営幹部クラスの求人はあまり転職市場に出回らないので「中高年に強い転職エージェントおすすめ」などを活用して非公開求人を紹介してもらう必要はあるでしょう。
経理経験者の転職を更に有利にするポイント
経理経験者がより有利に転職活動を進めるためには、何をするのが良いのでしょうか?
ここでは企業から高い評価を得られるための方法について、具体的に説明をしていきましょう。
資格取得に力を注ぐ
簿記検定や税理士資格などを取得することで、自己PRにつながります。
特におすすめなのが、簿記論や財務諸表論、法人税法などといった、税理士資格の科目合格です。
税理士資格は税務が中心と思われがちですが、簿記論や財務諸表論などは、会計人としては必要不可欠の知識です。
働きながらの場合、5科目合格には時間がかかりますが、1科目でも合格しておくと、転職の際に担当者からの印象がアップし有利になります。
私が担当した人でも、未経験で経理の実務経験はなかったものの、税理士科目に2科目合格している段階でしたが、大手飲食メーカーの関連会社で、経理経験者と二人同時に採用されたことがあります。
応募先企業が欲しい人材像を把握する
応募先企業がどんな仕事をしてくれる人を求めているかを把握しましょう。
大手企業の場合、より専門的な業務をしてくれる人材を求めている傾向にあります。会社が大きい分、仕事をする社員が多く、一人一人の担当する業務内容が狭く深くなるからです。
一方、中小企業の場合は少ない人数で仕事を回していくため、幅広い業務のできる人材を求めている傾向にあります。
あなたが大手企業の経理で、ある分野に詳しいなら、その分野の仕事をしてくれる人を探している会社を見つけましょう。ニーズとあなたのスキルがはまったら今より年収アップが可能です。
そのため求人内容を確認するとき「経理」という職種だけでなく、具体的に経理のどんな仕事なのか、というところまで読み解く必要があります。
求人サイトの求人票にそこまでの情報が載っていないなら、転職エージェントを活用して担当キャリアコンサルタントから詳しい業務内容を確認したり自分にあった求人を探してもらったりしましょう。
転職エージェントに相談をする
転職エージェントに相談をするのも一つの方法で、現在の転職市場の動向や適正な年収なのかも教えてくれるでしょう。
マーケットにおける自分自身の市場価値を知ることで、転職をするべきか留まって実務経験を積むかの判断が可能になったり、資格取得に励むなど取るべき行動が明確になってきます。
仕事に不満を持って相談に訪れた人が転職エージェントに相談することで、今の職場が恵まれている環境だったと知り、転職をしない決断に至るケースもあります。
最適な選択をするためにも、転職エージェントを積極的に活用してみましょう。


実務経験にプラスアルファする
社内で同じ業務を繰り返していると経験が積めない恐れがありますので、別の部門に異動を打診したり、転職を考えることもあるでしょう。
業務そのものを変えることはできなくても、経理作業の無駄を省いたり効率的な業務改善を行うことによって、コスト削減につながります。
経理業務以外の取り組みを行うことで、会計コンサルティングの会社に転職を果たした人もいるくらいです。
実務経験が積めそうにない場合でも諦めず、業務改善が提案できる人材になりましょう。
転職しやすい経理になるメリット
求人が豊富
経理は求人が多い職種です。転職サイトのマイナビ転職で確認すると500件近い経理の求人があります(2020年10月10日現在)。
会社を経営していくためには経理が絶対に必要なため、これからもなくならない職種といえます。
また、業種が変わっても決算書の作り方はほぼかわらないので業種を限定せず幅広く転職活動を行うことができます。
高収入の求人が多い
経理は年収が高く条件のいい求人が多い傾向にあります。年収600万円以上の求人はよく見かけますし、年間休日130日の仕事もあります。
人柄重視の面接
営業や編集と比べて、実績より人柄重視の面接になります。目に見える数字で能力を測ることができないので「どんな経験を何年してきたか」がアピールポイントになります。
5年ほどずっと経理をされてきた方は「経験の豊富さ」をアピールできます。
40,50代でも転職先がある
経理は規格に沿って行う業務がほとんどのためほかの職種と比べて40,50代でも転職のしやすい職種です。
妊娠や出産などで一度会社を辞めてからでも再就職先の見つけやすいことも魅力です。
株式投資や家計管理能力があがる
決算書が読めるようになるので、プライベートで行う株式投資などのスキルも向上します。また、管理会計の考えを家計に活かすことができるので、家計管理が楽になります。
経理の仕事で得た知識とノウハウをプライベートで活かすことができるのです。
経理経験者は転職しやすいが故の注意点
経理経験者は転職がしやすいがために、気をつけなければならない点があります。
それは、以下3つです。
ジョブホッパーにならない
経理はスキルマッチングの要素が強く、求人のニーズも高いため、転職しようと思えば可能です。
たとえば、税理士事務所であれば一年中どこでも募集をしています。
しかし、一度安易に転職をしてしまうと、気に入らないことがあるたびに転職を繰り返すようになり、キャリアがつかない恐れがあります。
転職を何度も繰り返すような、ジョブホッパーにならないように注意をしましょう。
キャリア面だけでなく、転職する先の会社のグレードもダウンして行く傾向にあるため、後悔する人は少なくありません。
資格マニアにならない
過去に、税理士・米国公認会計士・社会保険労務士・中小企業診断士と4つの資格を保有している候補者がいました。
いずれも難易度の高い資格です。
しかし、資格が多すぎて何が主たるキャリアなのかが分かりにくくなり、専門的な実務経験を持つ他の候補者に、選考で負けてしまうことがあります。
魅力的な資格だと感じても、簿記論や財務諸表論、法人税法など業務に関連する資格を中心に取得することをおすすめします。
安易なキャリアチェンジは控える
やりがいを求めて、経理から保険の代理店営業に転職をした人がいたのですが、厳しいノルマがあり、営業が思うようにできませんでした。
経理としてのこれまでの経験を活かすどころか、新しい仕事自体に慣れないため、再び転職を考えることになってしまったのです。
「やはり経理に戻りたい」と思い転職活動をしたものの、キャリアに一貫性が無いという理由から経理職での再就職は長い時間を要しました。
一度キャリアチェンジをすると、再び経理に戻ることは可能ですが、税理士事務所などの一般企業以外での転職先しか確保できないなど、キャリアが行き詰る可能性が高くなります。
実録!経理転職者の転職成功体験談
37歳で転職に成功したとある経理マンをご紹介しましょう。
中堅の電子メーカーで経理を経験していたAさん。
社内で告知されていた早期退職の募集を見て、「いずれ肩たたきに合うかもしれない。今のうちに転職を」と、私の元にお越しになられました。
Aさんの強みは連結決算業務でした。
勤務する電子メーカーには、海外に子会社があり、Aさんは連結決算書の作成を任されていました。
37歳という年齢と、語学力の2点においては他の候補者に劣りましたが、最終的に、国際的な電気製品を展開する大手メーカーに転職が決まったのです。
英語力については、外国人上司からレベルアップするよう要求をされましたが、
・同じメーカー出身である点
・誰とでも打ち解けるコミュニケーション力
・海外子会社との連結決算業務
上記3点を高く評価された結果、転職成功を果たしたのです。
年収750万円から年収820万円にアップし、若手を束ねるリーダーとしてマネジメント業務を任されるなど、実務においてもキャリアアップを果たしたのです。


経理職の転職は大企業と中小ベンチャーどっちが良い?
経理職の転職を考えたとき、大企業へ転職するのか、それとも中小ベンチャーへ転職した方がいいのか悩む人は少なくありません。
そこで、それぞれのメリットとデメリットを挙げてみました。
大企業の場合 | 業務が細分化されています。ある特定の分野を担当することで、スペシャリストとして、キャリアを積むことが可能になります。 |
中小ベンチャーの場合 | 経理部が財務や総務や人事部を兼ねている会社が多く、経理に特化した業務経験を積みにくい傾向にあります。そのため、何でもできるゼネラリストとして広く浅いキャリアになりがちです。 |
どちらを選ぶにしても、自分自身の志向性が大切です。
専門性に特化したスペシャリスト志向なのか、オールマイティーに仕事ができるゼネラリスト志向なのかによって進むべき道を選択しましょう。
経理の転職に強い転職エージェントランキング【数字のプロ】
